なぜ内積・外積が大切なのか
大学でベクトル解析を勉強し始めると、最初に「内積」「外積」が出てきます。すでに高校で計算方法自体は習っているので、「知ってるやつだ」と思ってサラッと流してしまいがちです。
でも実はこの内積・外積、この先出てくる勾配(grad)・発散(div)・回転(rot)の定義の土台になっています。ここでの理解が曖昧なまま先に進むと、あとで発散定理やストークスの定理を勉強する際や流体力学の授業でついていけずに困ってしまいます。
なので今回は、計算方法だけでなく例題も使って分かりやすく説明していきます。
内積とは?
内積の定義
2つのベクトル \(\vec{a}=(a_{1}, a_{2}, a_{3})\) と \(\vec{b}=(b_{1}, b_{2}, b_{3})\) の内積は、次のように定義されます。
\[\vec{a}\cdot\vec{b}=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+a_{3}b_{3}\]
高校で学んだ内積の式と違う式がでてきて驚く人もいると思いますが、式の意味は変わっていません。言葉で説明するとこんな感じです。
内積は、各成分の掛け算の和である。
言葉で説明されるとかなりわかりやすくなると思います。ここで「各成分ってなんだ?」と思った方はベクトルについての復習をしておきましょう。(ここで触れると長くなってしまうので割愛)
また内積は必ずスカラーになります。(ベクトルとスカラーを混同しないように気を付けましょう!)
内積の幾何学的意味
2つのベクトル \(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) がともに零ベクトルでないとき、それらのなす角を \(\theta\) とすると
\[\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta\]
と表すことができます。これが内積の図形上での意味です。高校でも習っているのでなじみ深いですね。
また、この式から次の関係が成り立ちます。
\(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) が直交する ⇔ \(\vec{a}\cdot\vec{b}=0\)
この「内積がゼロになるとき2つのベクトルは直交する」は大事なポイントなのでしっかり覚えておきましょう。
内積の使い道
ここまでで、「内積の定義」についてはある程度理解できたと思います。

「内積の定義」はある程度分かったけど、そもそも「内積」ってどういうときに使えばいいの?
そうなんです。「内積の定義」を理解していても使い方が分からないと意味がないですね。
では「内積」はどういったときに使えばいいのでしょうか?
内積は「あるベクトルが、別のベクトルの方向にどれだけ伸びているか」を表す量
これが「内積」の使い道です。「内積」はあるベクトルの特定の方向の成分を取り出したいときに使うんです。

太陽の光を真上から当てたときにできる「影の長さ」をイメージするのと近いね。\(\vec{a}\) の上から \(\vec{b}\) の方向に光を当てて、できる影(正射影)の長さに \(|\vec{b}|\) をかけたものが「内積」になるというイメージだよ!
それでは「内積」の使い道も理解したところでいくつか例題を取り上げてみます。
例題
例題1:仕事の計算
物体に力 \(\mathbf{F}=5\mathbf{i}+2\mathbf{j}+0\mathbf{k}\) [N] を加えて、変位 \(\mathbf{d}=3\mathbf{i}+4\mathbf{j}+0\mathbf{k}\) [m] だけ移動させた。このときの仕事 \(W\) を求めよ。( \(\mathbf{i},\mathbf{j},\mathbf{k}\) は基本ベクトル)
仕事は力と変位の内積であるから、\(W=\mathbf{F}\cdot\mathbf{d}\) で求めることができる。
\(W=5\times3+2\times4+0\times0=\underline{23}\)
例題2:直交条件の利用
\(\mathbf{a}=\mathbf{i}+2\mathbf{j}+3\mathbf{k}\) と \(\mathbf{b}=3\mathbf{i}+t\mathbf{j}+\mathbf{k}\) が直交するような \(t\) の値を求めよ。(ベクトルは太字で表記される場合もあります)
\(\mathbf{a}\cdot\mathbf{b}=3+2t+3\)
\(\mathbf{a}\cdot\mathbf{b}=0\) のとき \(\mathbf{a}\) と \(\mathbf{b}\) が直交するので、\(3+2t+3=0\)
したがって、求める \(t\) は \(\underline{t=-3}\)
まとめ
今回は「内積」について、定義から幾何学的な意味、そして使い道まで解説してきました。
- 内積は各成分の掛け算の和として計算できる
- 内積は \(\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta\) という形で、なす角とも結びついている
- 内積がゼロ ⇔ 2つのベクトルは直交する
- 内積は「あるベクトルが、別のベクトルの方向にどれだけ伸びているか」を取り出す計算
高校まではただの計算問題として処理していた内積ですが、大学に入ると勾配・発散・回転といった概念の土台になってきます。「なんとなく計算できる」で終わらせず、ここで意味までしっかり押さえておくと、この後の内容がぐっと理解しやすくなるはずです。
次回は「外積」について、同じように定義から使い道まで解説していきます。内積とは違ってベクトルとして返ってくるのが外積の特徴なので、そのイメージの違いにも注目してみてください。
